Google Earthで都市の変遷を眺めていると、街は完成した姿だけではなく、その過程にも大きな魅力があることに気付かされます。
今回取り上げるのは、1988年から37年にわたり進められてきた川崎市の「登戸土地区画整理事業」です。
登戸駅と向ヶ丘遊園駅の周辺では、長年親しまれてきた街並みが少しずつ姿を変え、現在では機能的で現代的な都市空間が形成されました。
本記事では、Google Earthの衛星写真と3D表示を用いながら、その変化の過程を追っていきたいと思います。
登戸駅・向ヶ丘遊園駅 周辺一帯の登戸土地区画整理事業
登戸駅と向ヶ丘遊園駅
登戸駅は、小田急小田原線と川崎~立川間を結ぶ南武線が交わる、川崎市北部を代表するターミナル駅です。
一方の向ヶ丘遊園駅は、多摩区役所の最寄り駅として知られています。かつては南口から向ヶ丘遊園へ向かうモノレールが運行されており、急行と普通列車の待ち合わせ駅として機能していました。また、ロマンスカーの停車駅でもあり、駅施設の規模は当時の登戸駅を上回っていました。
しかし、小田急線の複々線化に伴い、登戸駅は島式ホーム1面2線から2面4線へと拡張され、列車の待ち合わせ機能の中心は向ヶ丘遊園駅から登戸駅へ移りました。
登戸駅は近代的な駅舎へと生まれ変わりましたが、一方の向ヶ丘遊園駅は、小田急線で唯一の戦前から残る北口駅舎を有しており、ホームを含め駅全体から歴史と趣を感じることができます。
なお、南口駅舎についても、北口駅舎のデザインを踏襲する形で近年建て替えられています。
登戸土地区画整理事業が37年かけて完了
小田急線の登戸駅と向ヶ丘遊園駅の駅間距離は約400~500mと極めて近く、両駅周辺の市街地は一体の都市空間を形成しています。
このエリアでは1988年から「登戸土地区画整理事業」が進められてきましたが、このほど事業の完了が宣言されました。実に37年の歳月をかけての大事業でした。
道路の拡幅や宅地の区画整理といった基盤整備は完了した一方で、民間によるマンションや商業施設の建設など、街づくりそのものは現在も進行しています。
つまり、土地区画整理事業は完了したものの、登戸・向ヶ丘遊園の街は今なお発展を続けているのです。
向ヶ丘遊園駅 北口 の Google Erath 3D の Before と After
向ヶ丘遊園北口の直近のGoogle Earthにおける3D表示の変化をご覧ください。
土地区画整理事業の37年間のうち、最後の10年弱で区画整理が一気に進み、建物の解体や更地化が急速に進んだことがうかがえます。
この風景を眺めていると、ここに至るまでの長い年月のなかで、地権者の方々が重ねてきたさまざまな決断や、市の関係者の方々による粘り強い取り組みがあったことを思わずにはいられません。
向ヶ丘遊園北口の直近のGoogle Earthの3D表示の変化をご覧ください。
土地区画整理事業37年間の最後の10年弱に区画整理が一気に進み、建物家屋の解体と更地化が進んだ印象です。この風景を見て、ここに至るまでの長年にわたる地権者の方々の苦悩と市の関係者の方々の努力と苦労が偲ばれる思いでした。
Before
After
Afterの画像では駅前のタワーマンションの低層階部分がが建設中ですが、その後竣工を迎え、現在はすでに供用が開始されています。
登戸駅 南口 の Google Erath 3D の Before と After
次に、登戸駅南口のGoogle Earthにおける直近の3D表示の変化をご覧ください。
南口駅前は、登戸の昔ながらの街並みや雰囲気を最後まで色濃く残していたエリアでした。しかし、このエリアでも土地区画整理事業が進み、街の景観は大きく変化しています。
Before
After
この区画は「登戸駅前地区第一種市街地再開発事業」により146m38階建てのタワーマンションとなります。2026年6月現在、工事が進んでおります。
Google Erathの時系列ごとの衛星写真で開発の過程を確認
「登戸土地区画整理事業」の進捗をGoogle Earthの衛星写真で見ていきましょう。
Google Earthで確認できる最も古い衛星写真は2004年12月のものです。事業計画の開始が1988年ですので、この時点ですでに16年ほどが経過していたことになります。
黄色い線で囲まれたエリアに注目しながら、街並みの変化をご覧ください。
また、「登戸土地区画整理事業」の設計図を、同じ2004年12月時点の衛星写真に重ねてみました。
2004年12月時点の街区と完成計画を直接比較することができます。
事業開始から約16年が経過しているにもかかわらず、実際の街並みは計画図と大きく異なっており、区画整理の進捗がまだ限定的な段階であったことが見て取れます。
一気に進捗を確認したい方
Before(区画整理前の原型に近い段階)
昭和初期から戦後、高度経済成長期にかけて形成された街並みの骨格が色濃く残されており、往時の登戸の姿をうかがうことができます。
After(区画整理事業 終了間際)
道路網や街区が再編され、人や車両の動線、防災性の向上を意識した現代的で機能的な都市空間へと生まれ変わっています。
時系列で進捗を確認したい方
2004年12月
南武線登戸駅が先代の頃。小田急線登戸駅は島式ホーム1面2線です。
2008年8月
この頃までは向ヶ丘遊園駅北口に小田急バスの方向転換用ののターンテーブルが存在していました(2006年7月に廃止撤去)。
2007年3月
向ヶ丘遊園駅北口では、バスロータリーが完成し、その隣ではタワーマンションの建設が始まっています。
また、2006年6月には新しい南武線登戸駅と小田急線登戸駅を結ぶ連絡通路の供用も開始されており、駅間の利便性向上が図られている様子がうかがえます。
2014年3月
小田急線登戸駅は、一見すると島式ホーム2面4線の構造に見えます。しかし、最も南側に位置する1番線部分を見ると、区画整理に伴う用地取得がまだ完了しておらず、ホーム幅が不自然に狭くなっていることがわかります。1番線を建設するスペースが無かったのです。
つまり、この時点では将来的な4線化を見据えたホーム形状にはなっているものの、実際には1番線は供用されておらず、2~4番線のみが使用されている状態でした。
2016年に入り1番線建設の用地取得が進み高架建設が進み、2018年3月から念願の1番線の運用が開始しました。
2015年11月
2017年10月
向ヶ丘遊園駅北口では、タワーマンションが完成しています。
そしてここから、登戸駅北口周辺から向ヶ丘遊園駅北口にかけて、大規模な区画整理が本格的に進行していきます。
Google Earthの時系列画像でその変化を追っていると、道路が整備され、建物が姿を消し、新たな街区が形成されていく様子は、まるでシムシティの街づくりを見ているかのようです。
2018年11月
2019年3月
2020年4月
2020年10月
2021年4月
向ヶ丘遊園駅北口付近の区画整理が始まっています。
2021年11月
2022年11月
2024年3月
2025年11月
広範囲な既成市街地を土地区画整理の対象にした都市の例
登戸駅や向ヶ丘遊園駅の土地区画整理事業は広範囲な既成市街地を対象にしたものです。
同様の事例として、静岡県浜松市の例、青森県弘前市の駅前北地区など頭に浮かびます。また、愛媛県松山市のJR松山駅周辺エリアも近しい事例ではないでしょうか。
浜松市の例は、駅前中心市街地のかなり広範囲の密集した市街地を対象にしました。区画の整理自体尾はGoogle Erathの航空写真では得ることが出来ませんが、今昔マップon the webで浜松市駅東側区画の比較を確認することができます。
弘前市の例は平成16年(2003年)から実施・・・と比較的新しいためGoogle Erathの衛星写真で変遷を確認することが出来ます。
JR松山駅周辺エリアは進行中のため、衛星写真はもちろんのこと、3D表示でも今後の区画整理事業の進捗を確認していくことが可能です。高架駅自体も工事途中の状態が現在の3D表示なので、次回の更新では新駅舎を3D表示で確認できます。同時に区画整理により生まれ変わった駅周辺も確認ができるでしょう。
広範囲な既成市街地を対象とした土地区画整理の事例
登戸駅・向ヶ丘遊園駅周辺の土地区画整理事業は、既成市街地の広範囲を対象とした大規模な事業です。
同様の事例としては、静岡県の 浜松市 、青森県の 弘前市 駅前北地区、そして愛媛県の 松山市 におけるJR松山駅周辺エリアなどが思い浮かびます。
浜松市の事例では、駅前中心市街地のかなり広い範囲の密集市街地が区画整理の対象となりました。Google Earthの航空写真だけでは区画整理の内容までは把握しにくいものの、「今昔マップ on the web」を利用すると、駅東側を中心とした街区の変化を確認することができます。
弘前市の駅前北地区は平成16年(2004年)から事業が進められた比較的新しい事例です。そのためGoogle Earthの衛星写真でも、事業の進捗や街並みの変化を時系列で追うことができます。
また、JR松山駅周辺エリアは現在も事業が進行中です。衛星写真はもちろん、Google Earthの3D表示によっても今後の変化を継続的に観察することができます。
現在の3D表示では、高架化されたJR松山駅も工事途中の状態で表現されています。次回の3Dデータ更新では、新しい駅舎や完成した駅前空間、さらに区画整理によって生まれ変わった街並みを確認できるかもしれません。
最後に
Google Earthでは街の変化を数秒で振り返ることができます。
しかし、その数秒の映像の裏側には、何十年にも及ぶ計画、調整、そして街に関わる人々の営みが存在しています。
今回の登戸土地区画整理事業も、そのことを改めて実感させてくれる事例でした。
今後も様々な都市の変遷をGoogle Earthで俯瞰しながら、その街が歩んできた歴史に思いを巡らせていきたいと思います。

























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